外国企業の会社設立手続き・必要書類

事業活動の内容・目的に沿って、子会社(現地法人)、支店あるいは駐在員事務所のいずれかを進出形態として選択。
事業活動の内容、目的に沿って、さらに親会社の責任、裁判管轄や税法上の問題等を考慮したうえで、進出形態として子会社(現地法人)、支店あるいは駐在員 事務所の設立を選択することになる。米国の場合、州ごとに若干の違いがあるが、設立手続きの概略は下記のとおり。

I. 設立手続き

1. 子会社(現地法人)の設立

(1) 会社の定款作成(日本に比べて簡易)
(2) 発起人の署名済み定款を、所定の登録税・手数料とともに州務長官へ提出
(3) 州当局による会社設立許可証の交付
(4) 雇用主証明番号(Employer ID Number:EIN)の取得(別名:Tax ID (納税者証明))

2. 会社の種類と登記手続き

(1) 会社の種類
米国で設立できる会社は以下の8種類。

a. 株式会社(C Corporation)
定款を作成し、各州規定の書類をそろえ、登記料や手数料とともに提出する(ファックスやオンラインでの登記が可能な州もある)。それと同時に、連邦政府機 関の内国歳入庁(IRS)に納税者登録し、雇用主証明番号(EIN)を取得しなければならない。EINは、会社の形態にかかわらず、すべての事業組織が IRSから取得しなければならない。

b. 支店(Branch)
当該州規定の書類をはじめ、登記料や手数料をそえて、「外国法人の支店」として当該州政府に登記する。設立州以外の州でも事業活動を行う場合は、その州政府に外国法人として登記しなければならない。

c. 駐在員事務所(Representative Office)
米国では「駐在員事務所」という事業体は登記上、認識されていないため、州政府への登記が不要である州が多い。その代わり、駐在員事務所は事業所として認 められないことから、商業活動を行えない。駐在員事務所は日米租税条約上で「恒久的措置」とみなされない範囲で規定され、活動内容は一般的に以下に限定さ れる。
・日本の親会社が米国内に所有する物品または商品の管理や引渡しのための施設を使用すること
・日本の親会社のために商品を購入し、または情報を収集すること
・日本の親会社のために準備的または補助的な性格の活動を行うこと
連邦法人税は非課税だが、給与関連(個人所得)税および固定資産税の納税義務はあり、州税務当局とIRSに年1回の報告書を提出しなければならない。従っ て、IRSからEINを取得する必要がある。州税法上は、商業活動を営む一般の事業体と同等に取り扱われる。

d. 共同事業体(Partnership)
二人以上または二つ以上の会社が合弁事業を行う時に多用される形態。各州政府はパートナーシップ法を独自に整備しているため、規定内容は州によって異な る。税務上、法人課税されないことから、事業の損失をパートナー個人の所得と相殺できるという利点がある。

e. 有限責任共同事業体(Limited Liability Partnership:LLP)
すべてのパートナーが「リミテッド・パートナーシップ(有限責任パートナー)」で、いかなるパートナーも無限責任を負わない。LLPとして登記できる業種 には、法律事務所や会計事務所、何らかの専門的コンサルティング事務所に限定されるのが一般的。税務上はパートナーシップとして扱われる。

f. 有限責任会社(Limited Liability Company=LLC)
基本的には株式会社の一種。法務上は有限責任を負い、税務上はパートナーシップとして扱われる。LLPとの違いは、LLCの登記では業種が問われないとい うことと、パートナーシップの権利の委譲には他のパートナーの同意が必要だが、LLCでの権利(株式)の委譲が簡単であるということ。

g. 小規模法人(S Corporation)
形態上は株式会社だが、実際には個人の零細企業。発行株数や株主数に上限が設定されている。つまり、法務上は、LLCと同様に有限責任を負い、税務上は、 パートナーシップとして扱われる。小規模法人の形態を認められない業種があり、金融会社や保険会社がそれに該当する。非居住者が株主の場合には選択不可。

h. 個人事業主(Sole Proprietorship)
個人が事業を興す時に多用される形態であり、日本で言う個人経営に相当し、事業主である個人と事業体が同一扱いされる。登記は非常に簡単だが、事業の債務が事業主個人の債務とみなされるため、無限責任を負う。

(2) 米国では、会社登記はすべて州政府の管轄であり、連邦政府への登記は不要。ただし、連邦政府に納税する義務があるため、税務上の手続きは連邦政府と州政府の両方に必要となる。

II. その他企業家向け情報
1. 「州外法人」の考え方
事業の本拠地とする州に会社を設立するのが基本的な考え方だが、
[1] いずれかの州に会社を設立した後、州外法人としての営業許可(Authority to Transact Business)を取得すれば、米国内のほかの州でも営業可能である。
[2] 従って、会社法の州ごとの差異に注目して、例えば会社側にとって有利な会社法を持つデラウェア州に会社を設立し、実際の事業の本拠地(他州)に事務所・工場を構えるケースがかなり多い。

デラウェア州での起業には、次のような利点がある。
・フランチャイズ税は、年間最低175ドル、最高で18万ドル。
・同州に登記した企業が州外で得た収入(モノやサービスの売上げ)、また利子やその他の投資収入には州法人所得税が課されない。
・同州民以外が所有し、州外で営業する、デラウェア州に登記した企業の株式には州の相続税が課されない。
http://revenue.delaware.gov/services/Business_Tax/Franchise_Tax.shtml

デラウェア州政府ウェブサイト:
http://revenue.delaware.gov/services/BusServices.shtml

2. 米国で投資する場合の報告義務

米商務省は外国からの対米直接投資に関し、「INWARD INVESTMENT REPORTING REQUIREMENTS(国内投資報告要綱)」を規定している。根拠となる法は、「The International Investment and Trade in Services Survey Act(IITSSA)」と「The Agricultural Foreign Investment Disclosure Act」の2つ。

(1) The International Investment and Trade in Services Survey Act(IITSSA)
管轄するのは商務省経済分析局(BEA)。財務規模に応じ、四半期の国際収支報告(BE-605)、年度ごとの国際収支報告(BE-15A, 15-B, 15(EZ), BE-15 Claim for Exemption)、5年度ごとの国際収支報告(BE-12(Long Form), 12(Short Form), 12 Bank, 12 Mini, 12 Claim for Exemption)を義務付けている。これは、米国内現地法人と海外親会社との直接資本取引を把握するため。
詳細は商務省経済分析局(BEA)の以下のウェブサイトを参照。
http://www.bea.gov/surveys/pdf/current_Reporting_Requirements.pdf (302KB)

(2) The Agricultural Foreign Investment Disclosure Act(AFIDA)
米農務省が管轄の同法では、外国人が農地を所有する場合、「Agricultural Foreign Investment Disclosure Act Report」(書類番号はFSA-153)という書類を所有発効日から90日以内に農務長官に提出することを義務付けている。必要書類は、以下農務省の ウェブサイトからダウンロードできる。
http://forms.sc.egov.usda.gov/efcommon/eFileServices/eFormsAdmin/FSA0153_010524V02.pdf
(202KB)