米国における会社設立の手続き

米国での会社設立について、州による違い、設立方法や留意点

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I.米国での会社設立の手続き

米国での会社設立手続きは州によって大きな違いはありません。 ただし、設立申請方法や申請料金、州政府への報告事項等、細かい手続きで異なる場合があります。ここでは各州に共通する会社設立手続きの概略を説明します。特に断りがない限り、日本企業が事業主体を設立する際に多いケースとして株式会社の設立を前提とします。
米国で設立できる主な会社の形態は、以下のとおりです。

・Corporation / INC(株式会社)
・Limited Liability Company: LLC(有限責任会社)
・Limited Liability Partnership: LLP (有限責任共同事業体)
・Limited Partnership:LP(合資会者)
・General Partnership (合名会社)

II.会計事務所/法律事務所

米国で会社設立手続きを行う際には、一般的には会計事務所/法律事務所等に依頼します。ただし、どのくらい費用や準備・申請に時間が必要か、あらかじめ確認し、検討したほうがよいでしょう。法律事務所は会計業務は行いません。その点、当会計事務所は会計業務と一式で請け負えるためご面倒がかからないと思います。是非ご相談ください。

III.米国の会社法

米国の会社法は州法であり、その内容は州によって異なります。会社が実際に事業をどの州で行うかに拘らず、会社の設立定款や運営手続きなど社内事項は、設立した州の会社法が適用されますので、会社を設立する州の会社法をよく理解しておくことが重要です。

IV. 会社設立手続きの詳細

1.【会社名の予約】
まず、設立する会社の社名を確保します。会社を設立する州内で既に存在する会社名や類似または予約済みの会社名は使用できません。多くの州では、州務部 (Secretary of StateあるいはDepartment of Stateなど)のウェブサイトから既存の会社名を検索できます。一部の州では、電話や所定のフォームを担当部署に送付することで社名の照会に応じています。一部の州は有料です。希望する会社名が使用されていなければ、ほとんどの州では数10ドル程度で希望する社名を予約できますが、予約料金や予約期間、 予約延長可否は州により異なります。また、社名の予約制度がない州もあります。

2.【設立の申請】

設立発起人が署名した定款を州務部に提出します。設立発起人の要件は、「18歳以上の自然人1人以上」、「18歳以上の自然人、法人、非居住者も可」など と多く規定されています。どのように規定されているかは、各州の会社法で確認できます。定款は州により呼称が異なる場合もありますが、多くは 「Articles of Incorporation」と呼ばれます。定款には、会社名、事業目的、発行可能株式数、代理人(多くの州ではRegistered Agentと呼ばれ、会社を設立する州に実際に住所を有する個人や法人が担います)など必須項目を記入します。定款のひな形は、各州の州務部ウェブサイト に公開されていることが多いようです。

3.【定款の提出】

定款の提出は、州務部ウェブサイトからオンライン申請を認める州、郵送や持参のみ認める州もあります。オンライン申請が可能な州は、早く手続きが進められ るので、利用を推奨する州があります。定款申請料金は、数10ドルから数100ドル程度の州が多く、州によっては授権株式数によって異なる場合もありま す。
申請手続きに必要な日数は、数日から1カ月以内としている州が多いようです。多くの州では追加料金を支払うとより早く手続きを進められるようになっています。

4.【報告の義務】

会社設立後は、定期的に州政府へ報告をする必要があります。多くの州では年次報告(Annual Report)を求めていますが、その提出期限は州により異なります。また、会社設立30日以内等に初期報告(Initial Report)の提出が義務付けられている州もあれば、隔年報告(Biennial Report)でよい州もあります。提出期限までに報告が遅れると罰金が課されるので注意が必要です。

V. 事業ライセンスの取得

上記の会社設立の手続きとは別に、事業の種類によっては州や郡、市からライセンス取得が必要な場合があります。会社を設立する自治体の担当部署に確認が必 要です。文末に主な州の事業ライセンスを担当する部署のリンクがあるので調べる際の参考になります。

VI. 税務に関する手続き

1. 内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)にフォームSS-4を提出し、連邦雇用主証明番号(Employer Identification Number:EIN)の取得申請を行います。気をつけなければならないのが、会社責任者のソ−シャル・セキュリティー番号(SSN:Social Security Number=米国個人社会保障番号)が必要とされる点です。初めて米国に進出した場合、SSNを持っていないので、SSNを持つ第三者をThird Party Designeeとして選任し、EINを取得することになります。
2. 設立した州の税務局もしくは歳入局に所定のフォームで登録が必要となります。また、州によっては、郡や市の税務当局から納税を求められる場合がありますから、現地の関係当局に確認してください。

VII. その他

米国商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis、Department of CommerceBEA)へフォームBE-605(初期投資伴う報告義務書式)で報告の義務があります。資本金額が規定の金額に満たない場合は、提出免除 の書類を提出します。詳細は、BEAのウェブサイトから入手できます。

VIII. 法人税

法人税には、連邦と州、地方自治体の3つがあります。連邦法人税は、企業収入に応じて、15〜39%の8段階が適用されます。州法人税は州によって大きく 異なり、高い税率を設定している州や地方自治体もあれば、テキサス州やネバダ州、ワシントン州のように州法人所得税のない州もあります。ただし、州法人所 得税がない、または税率が極端に低い州では、売上税や固定資産税、あるいはその両方が高い場合が多くなっています。