法人税

American flag, United States of America

連邦・州レベルでそれぞれ課税される。米国外の親会社、株主、投資家や特許保有者への配当、賃貸料、利子、特許料の支払いに関しては10%ないし15%が源泉徴収される(「二国間租税条約」の項参照)。
一般的に、米国での事業投資を行う場合には現地法人を設立する。親会社である外国法人は、在米現地法人への出資にかかわる責任にのみ責任を限定できる。現 地法人には通常の米国企業と同様に納税義務が生じる。その他、国外親会社への配当金や(融資を受けた場合の)金利支払に関しては源泉徴収される。税金に は、連邦法人税と州、地方自治体の3つがある。
米国外の親会社は、株主あるいは融資者として受け取った配当金、金利、株の売却利益などに関して税申告を年度ごとに行い連邦税および州税を含む地方税を納税する義務がある。

I. 連邦法人税

連邦法人税は、企業収入に応じて、15~39%の8段階が適用される。法人税額は、通常の法人税と、代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax:AMT)の二本立てで計算される。
http://www.irs.gov/Businesses/Small-Businesses-&-Self-Employed/Corporations

1. 法人税

(1) 内国法人(連邦法、州法に基づいて設立・組織された法人)
外国での所得を含む全世界所得が課税対象となり、法人段階の利益と、留保利益の株主配当のそれぞれの段階で課税される。一般的に、所得の稼得に必要な経費 は控除が可能であるが、控除の種類は極めて多く、かつ解釈の相違の余地が多く存在する。

(2) 外国法人(米国法によらないで設立・組織された法人)
a. 事業所得
外国法人が米国で事業を行っている場合、その外国法人の本国を含むすべての全世界事業所得が課税対象所得となる。ただし、日米租税条約により、米国内の 「恒久的施設(支店、事務所、工場、作業所、倉庫など)」に帰属しないものについては非課税。

http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/i1120f.pdf (486KB)

b. 非事業所得
外国法人が得る利子、配当、ロイヤルティーなどの投資収入総額に対しては、30%の税率が適用される(租税条約により軽減される)。
2. 代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax:AMT)
高所得者、高所得企業にも一定の税負担を求めるという趣旨の下、高所得者の税控除、優遇措置を制限するために1969年に創設された制度。納税者は、各種 控除を考慮して算出した通常の所得税額と、各種控除を排除して一定の計算方式で算出したAMT税額とを比較し、高額な方を支払う。

https://www.irs.gov/Businesses/Small-Businesses-&-Self-Employed/Alternative-Minimum-Tax-(AMT)-Assistant-for-Individuals
http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/i4626.pdf (252KB)

II. 州法人税(法人所得税、またはフランチャイズ税)

州の法人税率は州ごとで異なる。高い税率を設定している州や地方自治体もあれば、テキサスやネバダ、ワシントンといった州のように州法人所得税の存在しない州もある。ただし、州法人所得税が存在しない、または税率が極端に低い州では、売上税や固定資産税、あるいはその両方が高い場合が多い。

州別法人税率
http://taxfoundation.org/article/state-corporate-income-tax-rates

財務省内国歳入庁
http://www.irs.gov/Businesses/Small-Businesses-&-Self-Employed/State-Links-1

二国間租税条約
1. 日米租税条約
2. 日米社会保障協定
3. 税務にかかわる環太平洋4カ国間における相互協議 など
1. 日米租税条約
日米両国政府は2004年春、所得税に関する二重課税の回避と脱税防止を目指した新たな租税条約に合意した。日米間の租税条約は1955年4月に最初の日 米租税条約が発効した後、1972年に従来の租税条約が発効し、2001年から内容改正の交渉が始まり、2004年の改正条約合意に至った。

戦略的同盟国家という経済的に緊密な日米二国間関係を前提に、投資交流を促進するために投資利得に関する源泉地国課税を大幅軽減するとともに、それにともなう脱税防止を規定している。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy151107/index.htm(日本財務省)
http://www.irs.gov/Businesses/International-Businesses/Japan—Tax-Treaty-Documents(米国財務省内国歳入庁)

2. 日米社会保障協定

2005年10月に、米国で働き社会保障税を納めた日本人が米国の社会保障(年金)を受給できる資格規定が大幅に緩和された。
同協定は、日米両国で働くことで日本と米国の両方で年金制度に二重加入を余儀なくされる、あるいは、米国で働いた期間が不十分なために、米国の社会保障税 を納めたにもかかわらず受給できないという状態を改善することを目的としている。
同協定が締結された結果、両国の年金制度に二重加入する必要もなくなり、また、米社会保障税の納税期間の長短に関係なく、日本に帰国した後、ある一定年齢に達した時に米国の年金を受給できるようになった。
同協定によって、両国での加入期間を通算することで受給資格を満たせるようになり、両国の年金制度に加入した期間に応じた年金をそれぞれの国から受給できる。
http://www.ssa.gov/international/Agreement_Texts/japan.html (米国社会保障局)

3. 税務にかかわる環太平洋4カ国間における相互協議等

2004年6月、日本、米国、オーストラリアおよびカナダの税務当局代表で構成される環太平洋税務長官会議(PATA)は、相互協議手続き(Mutual Agreement Procedure:MAP)および二国間事前確認手続き(Bilateral Advance Pricing Arrangement:BAPA)の改善のための税務当局間指針を策定し、その内容を明らかにした。
2部からなる同指針は、第1部で、PATA加盟国におけるMAPを確立し、迅速かつ一貫性のある手続きおよび処理方法を実践することを目指し、第2部で は、互いの国の納税者を公平かつ一貫性のある制度で対応できるよう効率的な環境整備の実現を目指す。

(1) MAPの骨子
MAP指針は、PATA加盟国当局の相互協議に関する指針であり、納税者の権利を尊重する内容が盛り込まれている。例えば、PATA加盟国の市民が、二重 課税を受ける場合、当該人物が居住者または市民である国の当局に対し相互協議を申し立てることを認める。その内容が正当であると認められるなら、加盟国当 局間で解決するよう手続き処理を促進する。また、協議や解決策の執行では、加盟国が相互に受け入れる内容であるとともに、一貫性が確保されるよう、二国間 租税条約に関連する諸規定に従わなければならない。

同指針は、「背景および適用範囲」や「相互協議の申し立ておよび受理」を含めた10条で構成される。詳細は以下参照。
http://www.irs.gov/irm/part4/irm_04-060-002.html

(2) BAPAの骨子
PATA加盟国の当局による、二国間事前確認手続きの処理方法に関する指針を示しているのがBAPAで、二国間における事前の納税手続きを求める越境納税 者を当該国間でいかに公正に扱うかを定める。また、PATA加盟国は、BAPAを推進する上で、迅速かつ効率的な手続きのための枠組みを整備する。
例えば、納税者が二国間事前確認を行う上で、懸案内容をはじめ、事前確認の利点や諸費用について協議することを奨励する。その際、納税者は当局と面談し、 課税対象となる取引内容について匿名(納税者の身元保護の目的)で話し合うことを認められる。同指針は、MAPと類似する11条から構成される。詳細は以 下参照。
http://www.irs.gov/uac/Pacific-Association-of-Tax-Administrators-Issues-Guidance-on-the-Mutual-Agreement-Procedure-and-Bilateral-Advance-Pricing-Arrangement-Processes
http://www.irs.gov/pub/irs-utl/pata_bapa_guidance_-_final.pdf (195KB)

その他税制
I. 法人に関わる税:雇用関係税、売上税、消費税、固定資産税、不動産譲渡税、他
II. 所得税(個人):連邦個人所得税、州所得税、越境所得税など
III. 会計報告に伴う義務(サーベンス・オクスレー法)

I. 法人に関わる税

1. 雇用関係税

従業員の雇用に際し、雇用主には各種の連邦雇用関係税が課税される。雇用主は、従業員に対する給与・俸給から、所得税相当額を源泉徴収し、定期的に連邦政府に納入する。その他、社会保障税および失業保険税も課税される。

(1) 源泉徴収関連
a. 連邦所得税:従業員が確定申告できるよう、個人別源泉徴収会計表であるForm W-2を作成する。
Form W-2:http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fw2.pdf (918KB)

b. 社会保障(ソーシャル・セキュリティ)税:給与総額11万8,500ドルまでに対して6.2%(2016年)

c. 高齢者向け医療保険(メディケア)税:給与総額20万ドルまで1.45%、20万ドル以上は2.35%(2016年)

d.各州の所得税ほか:http://www.taxadmin.org/fta/rate/tax_stru.html
e. 社会保障税と高齢者向け医療保険税については、2004年2月に締結された日米社会保障協定により、米国への派遣期間が5年以下で日本の社会保険制度に加入し、規定の届出を行った場合は免除される。

(2) 雇用主負担の給与税関連
a. 社会保障税:雇用主負担分は給与総額11万8,500ドルまでに対して6.2%。 メディケアは無制限に1.45%連邦保険拠出法(Federal Insurance Contribution Act:FICA)に基づき、従業員と雇用主の両方が課税される。

b. 連邦失業保険税:Federal Unemployment Tax Act(FUTA)に基づき、雇用主に課税される。年間給与総額7,000ドルまでに対し0.6%(州失業保険税を払っている場合。払っていない場合は 6.0%)。州によってはCredit Reductionとして追加徴収あり。

(3) 手続き
業務を委託する(サービスや役務を有料で提供してもらう)際、一人または一業者に年間600ドル以上の支払を行った場合、当該年終了後にForm 1099を作成し、その委託業者に翌年1月末までに送付する義務がある。さらに、Form 1096(Form 1099の集計フオーム)およびForm 1099を2月28日までにIRSおよび州当局に提出しなければならない。
Form 1099:http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f1099msc.pdf (192KB)
Form 1096:http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f1096.pdf (136KB)
2. 売上税(Sales Tax)
商品が売買される際に購入者に課される税。州政府が管轄であり、連邦政府からは課されない。課税対象商品や非課税商品、すべての売上税率は各州や地方自治 体が自由に決定し、税率は0%から10%前後まで州によって様々である。商品やサービスを提供する場合、その購入者から売上税を徴収し、州や地方自治体の 当局に申告、納税する。従って、売上税を購入者から徴収するような商品やサービスを提供する主体は、売上税徴収業者として当該州に登録する義務がある。
売上税は州と地方自治体の管轄であるため、納税に関する諸手続は千差万別だが、一般的には、四半期ごとに締め、翌月の15日や20日あるいは末日までに申告することが多い。

・各州および自治体の売上税率一覧
http://www.taxadmin.org/fta/rate/tax_stru.html

・米国売上税統一化プロジェクト
米国の売上税の制度・税率は州ごとで異なり、複数の州で事業を行う企業は、各州で売上税の登録を行い、回収、納税、申告を行わなければならない。この問題 を解決すべく、全米州知事会と全米州議会議員連盟のイニシアチブの下、売上税制度の統一化を図る「Streamlined Sales Tax Project」が進んでいる。まず18州の合意を得て、2005年10月1日にスタートし、売上税、使用税の施行統一が図られることになった(税率の統 一ではない)。現在、当イニシアチブに参加する44州のうち、24州(本加盟:23州、準加盟:1州)で本件に関する法案が可決されている。それらの州で は、各州ごとに登録を行っていたものが、一度に一括登録できるようになった。

Streamlined Sales Tax Project
http://www.streamlinedsalestax.org/
http://www.streamlinedsalestax.org/index.php?page=state-info
3. 消費税(Excise Tax)
連邦と州レベルで特定の品目に課される消費税。対象となる品目は、タバコ、アルコール飲料、トレーラー、タイヤ、石油製品など。税率はそれぞれで異なる。嗜好品に対する課税という発想に基づいている。

連邦消費税:https://www.irs.gov/Businesses/Small-Businesses-&-Self-Employed/Excise-Tax
州消費税:http://www.taxadmin.org/fta/rate/tax_stru.html

4. 固定資産税

固定資産税の主な対象は、不動産や動産、無体財産に分類される。不動産はすべての州で課税(税率は様々)されるが、動産と無体財産については州によって大 きく異なり、機械や装置、線路などに課税する州もあれば、動産や公益施設には課税しない州もある。固定資産税は、市場価値に税率を掛けて四半期ごとに徴収 される場合が多い。

5. 家賃収入に対する課税

家賃収入(賃貸所得)がある場合、不動産物件の所有者の国籍、あるいは個人か法人かに関わらず、連邦と州の税金がかかる。連邦税では、課税方式に「ネッ ト・レント課税方式」というものがあり、それを選択する場合と選択しない場合で、納税方法や額が異なってくる。
ネット・レント課税方式を選択しない場合は、源泉徴収課税方式が適用されることから、所有者が家賃の30%を源泉徴収税として連邦政府に納税することにな る。一方、ネット・レント課税方式を選択した場合は、所有者が毎年確定申告する義務が発生する。確定申告では、家賃収入から、固定資産税や支払利子をはじ め、修理費、管理費、維持費、改修費、保険料、仲介手数料、減価償却費といった経費を控除してネット・レント純利益(不動産賃貸所得)を報告し、通常の連 邦税率(個人なら10~35%、法人なら15~35%)に基づいて納税する。経費控除後に赤字になれば税金は発生せず、損失分は後の不動産所得との損益通 算や不動産売却益(譲渡益)と相殺できる。
州税では、各州の税制が大きく異なるため、それぞれの州の税法に準拠して納税する義務がある。

http://www.irs.gov/Individuals/International-Taxpayers/Foreign-Persons-Receiving-Rental-Income-From-U.S.-Real-Property

6. 不動産譲渡税

個人が不動産(個人向け住宅)を売却することで生じる売却益(または譲渡益)には、売り手の国籍にかかわらず連邦の所得税がかかる。不動産売却益にはほとんどの場合、州政府や地方自治体の所得税もかかるが、各州、各郡、各市によって税制および税法が異なるため、ここでは連邦税に限定する。

不動産売却益にかかる税金は、原則としてすべての売却にかかるが、当該物件が売り手の「主たる住居」となっている場合には、売却益が独身で25万ドル、夫婦合算で50万ドルまでなら非課税扱いとなる。「主たる住居」の定義は、売却前の5年間のうち2年間において、[1] 売り手が住宅を所有し、[2] その住宅を住まいとして使っていた、という二つの条件を満たす住居のこと。また、この場合の売却益とはキャピタル・ゲイン(購入費や売却費用、改築費を売 値から差し引いた後の所得)を指す。
売却益が独身で25万ドル、夫婦合算で50万ドルを超えると、超過分に長期キャピタル・ゲイン税(5%と15%の2段階)が課される。当該物件が「主たる 住居」でない場合、つまり、別荘の売却では、既述二つの条件に関係なく、キャピタル・ゲイン税が課される。

当該物件の所有期間が1年以上の場合が長期キャピタル・ゲイン、1年未満が短期となる。個人の長期キャピタル・ゲイン税率は既述のとおりで、最高でも 15%だが、売り手が法人の場合、通常の連邦税率と同じように最高で35%が適用される。一概には言えないが、納税額の目安については、州税を考慮する と、1年以上所有した住宅を売却した場合、譲渡税は個人の場合で売却益の約20%、法人の場合で約40%かかるとみた方がよい。

売り手が日本に帰国した後に米国内の持ち家を売却すると、売却益の10%が連邦源泉税として徴収される。売却益については、売却した年の確定申告で申告する必要がある。
一方、当該物件を売って売却損が発生したとしても、損失分は一切控除できない。

https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/p523.pdf (2.18MB)

7. 移転価格税制

親子会社間のように、同一の利害関係人により直接・間接に支配されている関連企業間の取引に関し、その価格の操作により課税所得の調整を行う場合、それは 「移転価格」とされ、税務当局が適当な取引価格に修正したうえで、必要に応じ追加課税を行う。

8. 過少資本

在米子会社の負債対資本比率が1.5対1.0超であり、かつ外国親会社から融資を受けている場合、そのネット金利費用(支払金利から受取金利を控除した 額)が、当該年度の調整課税所得の50%および前年度繰越超過制限余裕額(調整課税所得額の50%から、ネット金利費用を差し引いた額。3年を限度として 繰越可能)を超過する場合、その部分を損金算入することは認められない。

9. 自然環境税

法人は、その修正AMT課税所得が、200万ドルを超過する場合、その超過額の0.12%に相当する自然環境税を課税される。

10. 留保利益税

株主段階での課税を避けようとして法人が配当を行わずに利益を留保することに対するペナルティとして課せられる税。留保課税所得に対する税率は20%。課 税回避目的の有無については総合的な判断となるが、利益留保が妥当範囲かどうかについては、客観基準が設けられている。

11. 予定納税に関して

当年度の予測税額の90% または前年度納税額の100%は、確定申告書の提出を待たず、予定納税として、課税年度の開始から4、6、9、12カ月目の15日までに納付しなければならない。