所得税

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個人所得税には、連邦個人所得税と州所得税がある。

1.連邦個人所得税

(1) 連邦個人所得税率は下記のとおり。

(2) 居住者と非居住者の2種類に分けられ、給与から源泉徴収される場合は個人が翌年4月15日までに当該年の確定申告をし、源泉徴収されない場合は四 半期ごとの予定納税に加え、翌年4月15日までに確定申告する義務がある。特に日本から米国に派遣される就労者の場合には、居住者か非居住者かが重要とな る。それぞれの定義は次のとおり。
<居住者>
・当該暦年中に米国永住権を取得している者。
・当該暦年中に31日以上、米国に滞在し、当該暦年を含め過去3年間に計183日以上、米国に滞在している者。ただし、当該暦年を1とし、前年を3分の 1、前々年を6分の1として、それぞれの当該暦年の米国滞在日数にそれらを乗じて合計した日数が米国滞在日数として扱われる。また、継続する12カ月間の 米国滞在日数が183日を超えると居住者扱いとなる。ただし、学生(Fビザ)や学術分野での交換訪問者(Jビザ)、非語学または各種学校留学生(Mビ ザ)、実務研修者(Qビザ)は、既述の居住者定義に当てはまったとしても非居住者として扱われる。

<非居住者>
・既述の居住者の定義に当てはまらない者。非居住者でも、Form 8843を使って免税申請をIRSに提出する義務がある。
http://www.irs.gov/taxtopics/tc851.html

2. 州所得税

納税者は、連邦所得税の他、州政府と地方自治体にも所得税を納税する義務があり、毎年4月15日を期限に前年の分を確定申告しなければならない。ほとんどの場合、州政府への確定申告書類と地方自治体への書類は兼用できる。

3. ビザ・ステータスと所得税

米国にいる外国人の所得税は、当該外国人が「居住者」か「非居住者」かによって課税対象になるかが異なり、また税金の種類、税率が異なる。「居住者」か「非居住者」かは、ビザの種類によって決まる。

(1) 居住者扱い:永住権(グリーンカード)保持者

(2) 非居住者扱い:Aビザ(外交官)、Gビザ(国際機関職員)、Fビザ(学生)、Jビザ(交流訪問者)、Mビザ(専門学校生)、Qビザ(文化交流訪問者)。
ただし、AビザとGビザの場合、勤務先から受ける給与は非課税ながら、それ以外の所得には課税される。

(3) 滞在日数で居住者か非居住者かが決まる:Bビザ(短期商用、観光)、Eビザ(貿易商・投資家)、Hビザ(一時的専門職就労者)、Iビザ(報道関係者)、K ビザ(婚約者)、Lビザ(管理職)、Oビザ(特殊技能者)、Pビザ(芸能人、芸術家、スポーツ選手)、Rビザ(宗教関係者)。
税法上、下記の2つの条件を満たすと居住者として扱われる。

・任意の年(1~12月)における米国滞在日数が31日を超える。
・任意の年の滞在日数と前年の滞在日数の3分の1と前々年の滞在日数の6分の1の合計が183日を超える。

http://www.irs.gov/taxtopics/tc851.html

4. 越境所得税

すべての所得には、当事者の居住地に関係なく連邦所得税がかかるが、州所得税や地方自治体所得税については、それぞれの税制による。ただし、アラスカ、フ ロリダ、ネバダ、サウスダコタ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7州では所得税がない。また、ニューハンプシャーとテネシーの2州では、投資所得 (例えばキャピタル・ゲイン)だけが課税対象になっている。

http://www.taxadmin.org/fta/rate/tax_stru.html

一方、勤務州と居住州が異なる場合の所得税は、当事者本人が「居住者」であるか「非居住者」であるかを州財務省に申告する必要がある。例えば、勤務地が ニューヨーク州で居住地がニュージャージー州の場合、勤務地に対しては「非居住者」として給与所得を課税対象所得として申告し、居住州に対しては「居住 者」として申告する。その際、居住州には、内国歳入庁(IRS)に申告した所得額を報告し、それと同時に、勤務州で納税した額を「他州税額控除」として申告することで控除を受ける。

III. 会計報告に伴う義務(サーベンス・オクスレー法)

1. 概要

サーベンス・オクスレー法(Sarbanes-Oxley Act of 2002:以下SOX法)は米国証券取引委員会(SEC)に登録する企業とその連結対象子会社に対し、企業会計や財務報告の透明性と信頼性を高めることを 規定した法律。2001年12月にエネルギー大手エンロン、2002年6月には通信大手ワールドコムが経営破たんし、巨額の粉飾決算をはじめとする不正会計が明るみに出た。いずれも史上最大規模の倒産事件だったため、多くの投資家が被害を受け、米国の企業会計への不信感を招いた。

同法は、こうした企業会計の不正事件の再発防止を狙いとしている。外部からの監査だけでは不正や違法行為を防止することは困難なため、企業内部の管理体制の強化を求めるもの。

同法は第404条「経営者による内部統制の評価(Management assessment of internal control)」で、内部統制の責任は経営者にあり、財務報告書の作成過程を精査し、財務諸表のミスや不正を防ぐことを定めている。ここで、「内部統制」という語は、業務の有効性・効率性、財務諸表の信頼性、関連法規の順守に関して、合理的に保証することを目的とした、取締役会、経営者およびその他の 構成員によって遂行される1つのプロセスを指す。内部の管理体制や書類手続きに不備があった場合は、経営陣が厳しく責任を問われる。企業側には業務プロセ スを隅々まで文書化し、独立した監査法人による会計監査が義務付けられている。

SOX法の導入後、企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)が強化され情報開示が進み、監査法人との役割分担も明確になるなど、一定の収穫はあった。

2. コスト

文書化に伴う人員増や情報システムの改善などに多大な費用を要し、規模の小さな企業には相対的にコスト負担が重く、経営を圧迫している。株式公開企業 274社(平均年商57億ドル)を対象に実施した調査(2006年3月、財務専門情報誌)によると、対応コストは1社当たり年平均380万ドルと前回調査 (2005年3月調査、436万ドル)から約13%減少したものの、年商に対する比率は全体平均では年商比0.06%に対し、年商2,500万ドル未満の 企業では同2.46%だった。

3. 効果

内部統制の基準を満たす企業ほど投資家からの信頼を得やすく、株価が上昇する傾向にある(同法を専門とする調査会社)。同法の適用対象となる上場企業のうち、12月決算の2,481社を[1] 2年連続で基準に適合(2,092社)、[2] 1年目不適合で2年目に適合(264社)、[3] 2年連続で不適合(125社)、の3つに分類し、2006年3月末の株価を同法導入前の2004年3月末の株価と比較した。

この結果[1] 2年連続で適合した企業群の2006年3月末株価は、2004年3月末と比較して平均27.7%上昇、[2] 1年目不適合だが2年目に適合した企業群の株価は同25.7%上昇、[3] 2年連続で不適合の企業群の株価は同5.8%下落した。[1]と[2]の株価上昇率は、主要株価指数の同期間上昇率(17.7%)を上回った。

同社は、株価に影響を与える要因はさまざまだが、現在の投資家は企業の公開情報が正確で完全かどうかを投資判断の基準の1つとしていると説明している。こ のため内部統制が整備されている企業ほど円滑に資金調達でき、新規事業や企業買収などに取り組みやすくなると分析し、同法順守によるプラス面にスポットを当てた。

4. 見直し、再定義への動き

SECは2006年12月13日、同法第404条の適用改善のために、定義があいまいだった事柄についてガイドラインを策定した。時価総額で7,500万 ドル未満の小規模企業と新規公開企業に対し第404条の適用開始時期を遅らせ、一定の準備期間を与えるなどの追加的な緩和措置を発表した。本ガイダンスは 2007年5月に承認された。

https://www.sec.gov/about/laws/soa2002.pdf (196KB)

http://www.sec.gov/rules/interp/2007/33-8810.pdf (954KB)