ネット販売を行う際の留意点

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米国で会社を設立しインターネット通販を行います。どのような点に注意すべきか教えてください。
ニューヨーク州やカリフォルニア州ロサンゼルスでは、インターネットでの販売事業のためのライセンスは特に必要としません。会社を設立すれば、インター ネット通販事業を行えます。ただし、州やネット販売で取り扱う商品の内容などによってはライセンス取得が要求される場合もあります。会社を設立する州およ び郡・市のライセンス担当部署に確認することをお勧めします。

ここでは米国内でインターネット販売を行う際の一般的な留意点を説明します。

I. オンライン・ビジネス特有の留意点
インターネットによる物品販売・役務提供業は、米国では電子商取引(E-commerce)の中でオンライン・ビジネス(online business)と呼ばれています。インターネットによる事業そのものに許可等は必要ありません。ただし、消費者保護や公正取引等の観点から連邦取引委 員会(Federal Trade Commission:FTC)が連邦ベースで規則等を定めています。主な留意点は次のとおりです。

1.広告・マーケティングの観点での留意点

対面販売と異なり、インターネットによる販売では消費者が商品を直接手にとって確かめる、あるいは販売業者に直接質問することが困難です。そのため、イン ター ネット上の広告では、真実を語ること、消費者を誤解させないこと、さらに業者の主張(特に健康、安全および性能に関して)が実証されていることが求められ ます。

15ドルを超える商品の販売については消費者が購入前に保証書を入手できることが要求されます。また、インターネット、電話またはメールオーダーで購入する商品に保証書がついている旨を広告で明示している場合には、保証書の入手方法を消費者に通知しなければなりません。

2.消費者保護の観点での留意点

消費者の個人情報の取扱いと秘密保持に格別の注意を払う必要があります。事業者の個人情報の取扱い、方針等のウェブサイト上での表現は基本的に自主判断に 任されています。ただし、カリフォルニア州のように個人情報に関する法律を制定している州もあり、事前に確認する必要があります。13歳未満の子供からの 個人情報の入手については、児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act: COPPA)に従い、個人情報の取り扱いや方針をウェブサイト上に必ず掲載し、さらに事前に子供の情報を収集する旨を直接保護者に通知し、許可 を得なければなりません。詳しい手順は文末のCOPPAを参照ください。

3.国際取引上の留意点

1999年12月、経済協力開発機構(OECD)は電子商取引に関するガイドラインを設定し、米国、日本を含む29カ国が調印しました。インターネット販 売業者は、公正な広告を行い、ウェブサイト上で事業者自身の業種や所在地、商品とその価格、保証、返品やクレームの方法、取引保護上の措置等を明示しなければなりません。OECDは2009年、2015年を目途にガイドラインの改訂を決定し、現ガイドラインの全面的な見直しを開始しました。

4.商品配送上の留意点

インターネットでの注文による物品販売では、配達所要日数、配達遅延時の通知、代金の払い戻し等に関する規則があります。配達所要日数を記載する場合に は、その根拠が必要です。配達日数を記載しない場合には、30日以内に配達できる合理的な根拠を持っている必要があります(「30日ルール」)。
詳細は文末のウェブサイトを参照ください。

II.税務上の留意点

ここでは州税について説明します。日本の消費税に相当するものとして、米国には売上税(sales tax)と使用税(use tax)があります。税率は州により異なります。

一般に、米国に店舗、事務所、倉庫等の物理的な存在(physical presence)を持つ事業者は、インターネット販売であっても、所在する州の州法人所得税および売上税の課税対象となります。ただし、州法人所得税や 売上税が存在しない州もあります。また、州によっては物理的な存在の解釈が異なります。会社を設立する州の税を確認ください。

通常、商品を州外または国外へ販売する場合(商品を直接州外または国外へ配送することが条件)には、州の売上税は適用されません。また、使用税は、商品を販売のために保管する場合には適用されません。
しかし、近年、大手インターネット小売業者が台頭し、その取引額が大きくなるに従い、州外事業者の州内消費者への売り上げに対する売上税を各州が適切に徴 収できていないという問題が大きく取り上げられるようになっています。これを受け2013年5月に公正市場法案(Marketplace Fairness Act :MFA)が米国上院議会で可決されました。同法案は下院議会へ移され審議されます。MFAにより、州外の売上が年間100万ドル以上のオンライン小売業 者は その所在地に関わらず、各州の売上税を納付することが義務付けられています。企業は顧客が居住する州に合わせて、売上税を徴収しなければなりません。例え ば、売上税がないアラスカ、オレゴン、デラウェア、モンタナとニューハンプシャーの5州に拠点を置く販売者は、売上税を徴収している他州に出荷した商品に ついて売上税を納付する義務を負います。本件に関しては、最新の情報を入手することが重要です。