レストランを開業する際の留意点

pixta_8327885_L米国でレストランを開業し、自身で経営する際の留意点を教えてください。
現地法人設立の他に、ビザおよび現地での開業許可を取得する必要があります。さらに、レストラン開業地を借りるには、損害賠償保険への加入が必須です。

 

I. ビザ
1. ビザの取得
A. 投資駐在員ビザ(E-2)
通常、投資駐在員ビザ(E-2)を申請します。ビザ取得は在日米国大使館に申請します。取得にあたり、米国に一定額を投資し現地法人(日本の親会社とは別法人)を設立し、事業が一定の収益を上げることを説明する必要があります。
一定の投資額とは、企業規模、業種、取り扱う商品、サービスの種類により異なります。投資金額の下限は定められていないため、事前に現地の移民弁護士事務所等に相談することをお勧めします。

B. 企業間転勤者ビザ(L-1)
投資駐在員ビザの他、企業間転勤者ビザ(L-1)を申請も可能。L-1ビザ の場合でも、ビザ申請には一定額の投資が必要です。この場合、事務所賃借費、人件費等の支払いなどを示し、一定の収益を上げることを証明します。

一般には、現地法人を設立した方が税制面、リスク管理面でメリットがあると考えられます。支店は税法上、日本の本社と同一法人とみなされること、訴訟等の 影響が日本の本社に直接及ぶことなどのデメリットもあります。上記ビザ2種のメリット、デメリットを十分検討し、判断してください。

2. ビザの更新
E-2 ビザ: 有効期限は通常当初5年です。更新は2年ごとで、更新回数に制限はありません。
L-1 ビザ: 有効期限は通常3年(新設の場合は当初1年)で、5〜7年の延長が認められます。
II. 開業許可の取得
開業にあたっては、以下3種の許可取得が必要です。

1. Liquor License(アルコール販売許可書)(州政府に申請)

Soft Liquor License(Wine & Beer Licenseと呼ばれ、日本酒、焼酎も含まれます)とHard Liquor License(全てのアルコール飲料が対象)の2種類のライセンスがあります。
レストランでアルコールを提供する場合、Soft Liquor License またはHard Liquor Licenseを取得します。
米国ではLiquor Licenseは州政府が発行します。ただし、都市や地域が独自に条例や規則を定めているため、個別に確認してください。

Liquor Licenseの取得方法は2通りの方法があります。新規申請の場合は、許可取得に半年から1年半の時間を要します。既存店をライセンス付きで買収の後、名義変更により取得する方式を検討することも一案です。
A. 新規申請の場合
事業主の履歴、開業予定地が審査されます。事業主に犯罪歴がある場合、また開業予定地が住宅地内である、あるいは教会や学校の近くである場合、許可取得は困難です。

B. 既存店買収(ライセンスの譲渡)の場合
州政府は、州が定める特定地域内で、事業主が既存店をライセンス付きで買収した後、名義変更により取得することを認めています(ライセンスの譲渡)。この 場合、ライセンスは仲介業者を介して取得します。既存レストランの買収により、許認可以外に、従業員を継承できる可能性があります。また、不動産売買を代行する第三者機関、エスクロー業者(Escrow)を使えば、重要事項の確認など、不動産買収に関する手続きが容易になります。

2. Conditional Use Permit(CUP)(特定地域内での条件付用途許可)(郡または市に申請)

以下の視点で審査されます。
a. 建設予定地がレストラン開業を許可される土地か
b. 開業に伴う騒音の発生、交通への影響
c. 駐車場の確保
d. 臭気の発生有無
e. ターゲットとする顧客層 など

3. Certificate Of Occupancy(入居許可書)(郡または市に申請)

建築担当課により、入居予定建物の飲食店としての安全性が審査されます(建築基準法、消防法、ハンディキャップ法、地震防災法等)。

III.  損害賠償保険への加入
レストラン開業予定地を借りる場合、損害賠償保険への加入は必須条件です。損害賠償保険には、火災、店舗内の事故、食中毒、従業員の労災など、さまざまな種類があります。訴訟への備えとしても、保険加入が必要です。

IV. その他
現地でクレジットカード会社への加入申し込みが必要な場合、手続きには時間を要します。余裕を持って申請することをお勧めします。